003.周南エコツーリズム基盤整備と宣言

●山こそエコツーリズムの起点に.2(前回からの続き)

 「今、必要とされているものは何だろうと?」地域ブランド研究会でも、特産品・商品開発にかかわるニーズのあれこれを良く検討しました。ニーズの意味は、必要・要求・需要。「市民の―にこたえる」「消費者の―が多様化する」という視点であれこれ掘り下げていきますが、他者の要望を窺うより、自身において「欠けているモノ」をピックアップするほうがずーと簡単で利便です。ニーズの本来の意味は「欠落」という意味らしいですが、山を起点としたエコツーリズムを考える上でも、このニーズからアプローチすれば、とても簡単に回答が引っ張りだせます。
 周南市域の山々や遊歩スポットを紹介する書籍・登山ガイドブック・ハイキングマップがまず少なすぎます。学術関連資料や行政書籍を除けば、ほとんど全市域的にまとまりのあるモノは無い、流通していないと言えるでしょう。「山口県の山」など県単位で集約した書籍はいくつかあります。それらから周南地域の山の情報をピックアップして参照するかですが、系統的な山域情報を得ろうとすれば、ほとんどはネットで個人的なブログや山行記録を頼るしかありません。それらの個人的な記録も、個人の感想や体力基準で記録されていますので、ポイント間の距離や踏破時間に一定のレギュレーションをもっているものではありません。

 再三、神戸と比較して恐縮ですが、都市部のすぐ北に屏風のように連なる六甲山系をいただくこの地では、裏山・六甲山系に関する書籍は、図書館や本屋の棚の1コーナーを埋めてしまう程揃えられています。そして多くの六甲山ハイカーの拠り所となっているのが、昭文社のエアリアマップ(山と高原地図)です。日本100名山が絡むか、著名な山域を(現在59カ所)対象にものしか作成されていませんので、残念ながら山口県域での該当マップはありません。 
 エアリアマップ「六甲・摩耶」(著者:赤松滋)は私が六甲山を歩き始めた頃で年間3~5万部の発行があったと聞きましたので、いかに愛好者の層が幅広いものだったか(よくニーズに応えられたモノだったか)が想像出来ますし、数百万人といわれる関西圏のハイカー達の共有情報として、このマップにおいて提供された・地形的イメージや、地理的レギュレーションの果たした役割は非常に大きいものだと思いますし、何にましても山歩きの楽しさ・遊歩文化を成熟させたその貢献度はきわめて大きいでしょう。

●まずはマップという基盤整備から・・・

これに習って周南市域においても、単なる観光マップではない、山岳地図としての精度の高いガイドマップが作成出来れば、この地におけるエコツーリズムの一つの基盤となることは確かなことだと考えます。たかが地図一枚の話ですが、これを昭文社や山渓レベルに負けないものを作成するには、かなりの労力とコストが必要です。だからと言って、よく行政にありがちな、どこか専門業者に委託してしまうようなやり方は感心できません。それはあまりにもお粗末で、芸のない話です。「共生・競創・協働」を標榜する以上、一者で作り出すのではなく、ここでもエコツーリズムに関心ある市民、地域活動グループなどと連携を図って、その中で作業を進めていくことが筋道に合っているようです。
地元の世話好き、方々で活動している山好きという潜在的な人材は山ほど居られるはずです。学生スポーツクラブや企業の愛好者も交えて、産官学で推進していくのも有効な方法でしょう。このプロセス自体が連携資源ともなっていきますし、作り上げた時の一体感・共有感こそ周南のシビックプライドの貴重な種となっていきます。

■四熊岳~嶽山~若山などの新南陽背山群、■飛松山~観音岳~城山~黒石山~大谷山~昇仙峰の西徳山ピーク群、■大華山~笠戸島~下松の南海ピーク群、■和田や熊毛の東山域、■鹿野周辺に点在する1000m級の山群等など、広域な合併市域のあちこちに点在する山域をすべてフォローして、1/2.5万又は1/5万縮尺:一枚の地図に収めるのは至難の業かも知れませんが、市民プロジェクトとしてはめっぽうやり甲斐のある楽しいものになりそうです。

●そして「周南エコツーリズム宣言」本題はここからです。
 この情報共有マップ作成という基盤整備と平行して、エコツーリズムガイド(ボランティアガイド)の育成・運営やこれを支援する施策を充実させることも不可欠です。そうして、この活動のコンセプトを象徴的にアピール出来得るイベントを築くことも絶対に必要でしょう。
 私たちが暮らす町の裏山・背山をしっかり体感出来て、その体験を全市的な共有感に高めることが出来るイベント、エコツーリズムへの関心の喚起させて、市域の内外への強烈にアピールし、「周南エコツーリズム宣言」とでも言えるようなシンボリックイベントを企画・開催して市民行事として持続的に育んでいきたいものです。(次回!いよいよイベントプランの紹介です)

●周南ツーリズム:関連ログ/
 008. 精神の健全性に繋がるヘルスツーリズム(湯野温泉
 007. 第2回ゆの浴衣まつり、魅力ある観光地の再建・強化なるか? 
 006. ふるさと回帰?ふるさと創造?〝農村六起〟
 005. ふるさとは遠きにありて思ふもの? 
 004. シビックプライドを支える山々
 003. 周南エコツーリズム基盤整備と宣言
 002. エコツーリズムの起点
 001. 従来型のイベントを打破できるか!「ゆの浴衣まつり」

●周南市道の駅:関連ログ/
 新産業のイノベーション基地「ワッショイ周南」
 お米コレクションプロジェクト!
 周南の未来を切り拓く道の駅
 周南市西部道の駅・見直し検討会?
 道の駅・パブリックコメントに参加して…

●周南デザイン:関連ログ/
 周南デザイン最終稿「新たなる道標」
 周南デザイン4、周南アイデンティティを生み出す「道の駅」を創ろう!
 周南デザイン3、シビック プライド in 周南? 
 周南デザイン2、イメージとスペース 
 周南デザイン1、プライドとブランド 
 【周南デザイン】周南まちづくりコンテスト最優秀賞受賞!

002. エコツーリズムの起点

湯野観音岳八十八ヶ所石仏の一つ、下は秋の歩け歩け大会の風景

●山こそエコツーリズムの起点に

 22日、湯野観音岳の清掃登山に参加してきました。
 暑さが本格化してきたこの時期では辛い作業ですが、たくさんのボランティアが参加されて山頂までの山道・参道を整備してまいりました。この地道な日々の活動が地域にとってとても大切なことは言うまでもありませんが、山を祀る、山の神を奉じるなど「山」への思いは、太古の昔より「山と人」との関係で繋がれてきた日本風土・文化の大きな柱の一つとも言えるものです。
 その根っこに、「山」にまつわるツーリズムの本質もあるのだろうと思うのですが、それはさておき、「山」を舞台にしたハイキングとかトレッキングとかが、以前より根強い人気を誇っており、観光業界の中でも主要なツーリズム資源になっています。これからはリタイア団塊世代をターゲットにした、目的も多様で数週間~1カ月のスケジュールがあるゆったりした登山ツアーや各種のエコツアー等が注視されています。
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 残念ながら周南市域では、目星いエコツーリズムスポットが磨かれておらず、エコツーリズムの育成も遅れています。というか手がつけられておりません。市域環境が、比較的自然環境に恵まれ(大半は自然フィールドかな?)ていることもあって、足下のお宝に気が付いていないというのが実情でしょう。
 私は、2003年に当時の新南陽市に神戸より移住してきて、その年の内に、この観音岳をはじめ城山、昇仙鋒、嶽山、四熊岳など周南市の裏山遊歩を楽しませていただきましたが、地元の人々にとっては、これらの背山に秘められた資源的価値に気づかれてていないのでしょうか、エコツーリズムへの積極的な取り組みを見ることがありません。「オラが裏山」をもっとアピールされてしかるべき眠っている魅力を掘り下げることが求められます。
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 自然フィールドに乏しい大都市周辺では、そのフィールドや自然体験を求めた近所登山、早朝登山、裏山ハイクなどという「遊歩文化」が成熟しており、趣味・余暇生活の一部としてライフスタイルの一端を占めています。自然との体験に飢えた都会人ならではの嗜好と言ってしまえばそれまでですが、地方においてもこの「遊歩文化」が、少し形を変えて普及し始めています。それは、都会ではやや希薄な「地域振興」というキーワードが加味され、ツーリズム発掘の大きなモチベーションとなっているところでしょうか。

●観光とは光を観ること、光を見直すこと

 「人の空洞化(過疎化)は、土地を空洞化させ、ムラを空洞化させる」そして「ふるさとへの誇りそのものが空洞化することがより深刻だ」という明大農学部の小田切さんの言葉ですが、地方の過疎地にとって、人が戻ってきて、耕作地やコミュニティを再生させるためにも、その土地そのものへの誇りを再生させる重要性を主張されているものと思われます。
 身近な風土への愛着・誇り、周南市のシビックプライドを再構築する上でも、これは出発点になるべき所です。従来型観光スポットと違って、周南の新ツーリズムは「此所」を起点とするべきです。そこに住む人たちが先ず、オラが山、オラが川、オラが田園に光を見出して、それを磨いていく作業を持続させる。これは、特殊なことでも何でもありません。もう一度私たちの身の回りにプライドの種を蒔いて、育てて、ブラッシュアップしていくという地道な活動であって、先人達の作業を繋ぎ直すだけのことなのかも知れません。時代はもうやみくもに登っていく時代ではありません、降りていこうとしています。それだけに誇りの再生には、「連携 = 共生と競創と恊働」がここでも大きな要素となります。

●具体的な提案
 低山ハイク、ピークハント、沢のぼり、里山ウォーカー、ワンダーフォーゲル、トレッキング、森林浴、ボランティアガイドなどなど・・・
 山に関するエコツーリズムのプランニングは縦横無尽に可能ですが、周南モデルで、それらをひとつ集約するプランを提案があります。(次回に紹介:これはけっこう楽しいプランですよ)

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周南デザイン最終稿「新たなる道標」

周南デザイン05
新たなる周南の道標

 「周南市西部道の駅」が地域にとってどうあるべきかを「周南デザイン」という観点から、いろいろと想いを巡らせてもう足掛け3年になりました。イメージ的にはほぼ完成図が描けたのかなと自分勝手に思い込んでおります。市当局の方向もコンセプト的に近しくなってきたようです。後は、誰がこの高いハードルを着実に超えつつ、数多の周南人を引っ張ってくれるのか、「人間力」の登場が課題になってきます。この「人間力」とて、一人相撲ではなく、連携パワーと相乗して更に大きな回転力を生み出していくものと思います。大勢の人に持ち上げられた、それこそ「ワッショイ!周南」です。

 というところで、このシリーズは今回を持ちましてとりあえず区切りを付けたいと思います。これよりは、描いた「連携の道の駅」の実現に向けての実作業となってきました。私個人としましては、この2年間に出来る限りの情報を収集して、開業時に必要な、そしてそれ以降にも活動の基盤ととなるようなデータベースをこの2年間に構築するようなことが出来ればと考えています。何ぶん一人では限りがありますし力が出ません。是非とも各分野の諸氏の連携を仰いで、その旨のグループなり、ネットワークを作っていきたいと考えております。山口デザインセンターでの研究会でも提案しようと考えていますが、ぜひとも多くの人のご協力をいただければ仕合せます。(コメント欄にでも書き込んで下さい)
(3月中には具体的な方向が浮かび上がってくると思います)

■周南ツーリズム~最終稿にあたって~

 2年前のパブリックコメントでは、ツーリズムの切口からの提案でしたが、今回の〆もツーリズムの観点で締めたいと思います。2年前と比べ市や県をはじめ、地域のグリーンツーリズムも活発に動き始めています。
昨年は「地旅博覧会 in やまぐち」が県内各地で開催され、11月には湯野地区で「とろろ蕎麦グルメ」と「山芋掘り体験」をセットにしたモデルコースが設定され、モニターツアーが実施されました。直に土にふれ合い、その恵みを美味しくいただた参加者の多くより感動の便りをいただきました。数年前から私たちが再三提案していたイベントですが、地元における地域資源への理解も深まって、やっと日の目を見ることになりました。
〈おいでませ山口たび倶楽部のサイトにて、本ツアーを募集しています(3月末迄)〉

 周南起点のツアーは他に、「ドラマチック周南コンビナート夜景観光」「ドラマチック工場夜景バスツアー」の2コースがエントリーされています。民間の夜景クルーズもありますが、コンビナートの産業ツーリズム価値はまだまだ、こんな形ではもったいないモノですし、コンビナート以外にも周南市の各地にはツーリズム資源が山と眠っております。
古いマス的な観光ビジョンに縛られずに、身の回りから洗い出す作業が求められています。山口における地旅ブームの起点ともなったと言われる岩国市の市民グループ「地旅の会」では、とっくに廃れていた市内の八十八霊場巡りの復元から始まったと聞きます。
 「朝の散歩会」がツアーサークルに変身した。ウィンドウショッピングや防災実習がツアー化された等など、個人志向や生活様式の多様化・多彩化の中で、いまやツーリズムは日夜、様変わりを続けています。このような行動様式・モチベーションを連携よく拾い上げて、迅速にサービス化・商品化するシステムがツーリズムには一層要求されています。

 海の幸あり山の幸あり、巨大プラントあり棚田あり、何でもありの「周南」は実はツーリズムの宝庫なのです。そのお宝に光を与え得なかった(光を観ることができなかった)のは、人の意識・生活の変化や社会の指向をよく見定めて、そのニーズに応えるものを提供できていなかった(デリバリー力の欠如を含めて)その事に尽きます。
グランドデザインを描くことができなかった行政の責任もあるでしょうが、大企業におんぶにだっこの市民意識の危機感の無さも反省すべきところです。市町合併後、地域意識も少しずつ変化はあるものの、市全体の将来を見通すデザインを支えるべきシビック・プライドが芽吹くまでに到っておりません。これはツーリズムにとどまらず地域ブランド全般にわたる課題です。

 誇りをもって我が地域を見直すためには、まずは、ささやかな身の回りのアクションを拾い上げるところから始めるのが一番。
「ウォーキングしながら棚田を眺めたい」「山に登って湯につかる」「子供と遊びながらモノをつくる」「美味しいもの食べ、人と出会う」そんな積み重ねから、さまざまなニーズを拾い上げて、フォームを捻り出して、的確にデリバリする。連携の枠組みにはめ込むことが出来るようになれば、あとは自然に走り出してくれるでしょう。
連携が生み出す周南ツーリズム「しあわせます周南」こそ、特産物と肩を並べて「道の駅」の花形スターになるだろうと大いに想定していますし、コレクションしていきたいものです。

新たなる周南の道標「フューチャーセンター」

 徳山駅周辺整備、市庁舎の建設、スポーツ公園整備など、進行しつつあるプロジェクト計画をみても、前世紀的な箱もの発想がまだまだこびりついているようです。ソフト的な創意工夫を積み上げれば、物量に頼らない活性地域の形成は十分に可能というか、これからの時代はそうあるべきです。市民の想いやニーズが一体何処にあるのか、何を目指しているのか、また、そういうものを提出して、集約していく場が何処にあるのか。そういう場が育まれることが望まれています。そして、その場こそ新しい周南の躍動の一つの起点となるでしょう。
 米百俵ではないですが、今こそ稔りある将来を見越したビジョンを示せるフューチャーセンターの設置が急がれます。この道標こそ身近な足下にたたずんでいることを見逃してはなりません。是非とも「周南連携の道の駅・ワッショイ!」の中に設けられることを切望します。

   しとどに濡れてこれは道しるべの石 山頭火

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周南デザイン その4〝周南アイデンティティを生み出す「道の駅」を創ろう!〟

周南デザイン04_2
周南アイデンティティと新産業の創出

 長いお休みで恐縮しております。昨秋から諸事で謀殺されつつ、年末年始は風邪でダウンした我が家のスタッフたちのお世話で家事に奔走しておりました。気がつけば新年正月ももう半ばにさしかかっており、昨日が「周南市道の駅」パブリック・コメントの締め切り日。個人的にまとめた提案書も間に合ったようでやっと一区切り、ブログ再開の重いキーを叩き始めました。
 たまたま、本日の日本農業新聞に、農業の6次産業化の記事が目に留まりました。地方が生き残る有効手段「都市交流で地方復権を」と題された論説(明日への視座)です。

■その要旨・・・
 今回の震災でも浮き彫りになりましたが、経済のグローバル化の下支えをしてきたのが地方であって、さらにこの傾向が加速され、有効な振興策を見出せなければ「地域」は消滅の憂き目につながるかもしれない。そこで、生産から加工、商品まで仕上げ、付加価値を高める6次産業化は、効率から考えると生産性に劣るかもしれませんが、地域内に波及する連携・共有の目に見えない価値(エネルギー)を大いに生み出します。
 そういう力を活用し、中央・大企業のパトロン、原発の誘致などから脱却した自立した新産業を地域の中から生み出し豊かな社会を目指さなければならない・・・

 というような内容なのですが、正しくそれを具現できる舞台が、周南市にもうすぐ登場しようとしています。
市長交代の見直しによって開業が一年先送りになりましたが、単なる従来型の道の駅、単なる一地域の振興拠点にとどめる事なく、周南市全域に及び、市民全体にも共有感を抱かせるソーシャルビジネスとしての「新産業」の先駆けとなる拠点として見直すには、絶好のチャンスだったと思われます。
ハコモノ経営の議論もあって、施設規模の縮小への方針が出されていますが、限られた予算の中でも出来るだけ、地域の連携による6次産業化による「新産業」育成が担える規模・体制を備えたものになるよう要望するばかりです。

■周南市には何が欠けているのだろう・・・

 という議論も「地域ブランド研究会」の中でも随分尽くされました。シビック・プライドの観点からも、「連携の道の駅構想」は市民の自負や愛着の種を蒔くチャンスであり、継続の中でその芽を育ていけるでしょう。
まさに今、一番必要とされているのは周南市民のアイデンティティに他なりません。市民全体が共有できうる地域価値がなかなか見出せない一因に、平成15年の広域行政の合併以来、この市全体のアイデンティティが再構築できていない事がまずあげられるでしょう。
 特に都市部と山間部との市民共有の意識の乖離もあり、地域間の連携の広がりのダイナミックな展開が生み出されていない事が地域ブランド(価値)を生み出せない大きな要因だと思われます。
 これらのことをふまえて、昨暮に地域ブランド研究会から、全市的な連携、それも多様で多彩な連携軸を組み合わせた「共生・競創・協働のワクワクステーション」という理念を柱にした「道の駅」構想が「道の駅推進室」へ提言が出されました。
具体的に全市をどういった連携軸でつないでクロスオーバーさせるか、大きな課題ですが、今、周南市民が前向きに取り組むチャンスだと感じます。(ヒシヒシと感じます。こんな道の駅にしたいと共感される方はぜひ研究会にご参加ください。連絡をお待ちしております)

■「周南人」としての誇りと愛着を取り戻すために・・・・・・

 主人公は周南の人間たちなのです。「周南人として集え、周南人としてのこだわりを認め合い、周南人としてのモノづくりができる場としての道の駅」を市内外に発信する事で、旧行政区で培われていた各地域のコミュニティ活動と地域資源の活用をさらに触発し、連携の絆を深めることにより、全市的な共有資源としてダイナミックに飛躍させる場としての「道の駅」を生み出す事ができれば、これからの時代を乗り越えていく市民の元気創出の一翼を担えるものと確信します。
 幕末の長州藩の藩論をまとめるにも、多くの長州人や志士たちが奔走しました。成し難いことでしたが、それをなし得た後の連携の生み出したパワーのすごさは歴史が証明しています。
「誰のための、何を生み出すための道の駅」か? その主語に据えるべき言葉は「周南人」という言葉以外には見当たりません。

周南デザイン04

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周南デザイン その3〝シビック プライド in 周南?〟

周南デザイン03
シビック プライド in 周南市

 シビックプライドとは聞き慣れない言葉ですが、意味は簡単です。直訳したまま「市民の誇り(自負と愛着)」です。郷土の自負をどう再生していくかというような研究ですが、ルーツは18世紀のイギリスで生まれた考え方のようです。近年の元気を失った日本の各都市部では、これを地域再生・まちづくりの切り札にと、研究課題として取組み始めています。
 ツイッターのタグから拾ったものでは、東京理科大学・伊藤香織准教授と日本デザインセンターの紫牟田伸子氏を中心に、日本における事例研究等が「シビックプライド会議」で今月初めオンライン配信されていました。(※活動報告は→シビックプライド研究会)
 私のブログ記事「周南デザイン」は中山間地の農村の3つの空洞化(人・土地・ムラ)は根底にある「誇り」再生が最重要課題だという明大農学部の小田切先生の指摘を都市部へ延長して書いていたものですが、 たまたまこの「シビックプライド」に遭遇したもので、研究の手法等はよく分かりません。(シビックプライド―都市のコミュニケーションをデザインする 著作は注文しましたが)

 Planning PRIDE (誇りの種を発見する)
 Designing DELIVERY (誇りの種を植える)
 Checking CHANGE (誇りの芽を育て世話をする)

 この本の第三章にある三つのフェーズを想定して、一つずつ取組めば簡単な取組みのようですが、果たして周南市ではいかがでしょうか? 考え方や手法はさほど難しいものではありませんが、地道な努力と時間が必要なことは確かなようです。特に誇りの芽を育てるのはホント大変そうです。でも、ムーブメントになってしまえば簡単なようですので、要はやはりデザインの在り方でしょうか?

■「デザイン都市・神戸」はモデルになるか?
 我が出身地の神戸は、都市的な条件は周南市に似ており、様々と参考になる取組みが多いですが、この地では、アジアで先駆けてユネスコの「創造都市ネットワーク」デザインのカテゴリーで認定され、「デザイン都市・神戸」を標榜、まちづくりの一環として様々な分野で都市デザインの取組みが進んでいます。
この行動宣言の中に、デザインという不可欠の力を・・・
「毎日のくらしの中で、環境・防災・福祉・教育といった私たちの身近な課題を見えやすくすること、伝わりやすくすること、そしてこれらに対して行動をおこさせること、これもデザインの大きな役目です。」と記しています。

■危機感の無さ?
 重工業が国家プロジェクトであった明治から、高度成長の昭和の街の生い立ちは、神戸と良く似た経過を経ています。まちはいつも活計(たっき)にあふれ、通過してくるモノや情報に満ち、市民生活は多彩なスタイルが選択・共有でき続ける筈でした。(この辺りは創造半分で書いています)
ところが低成長時代、経済はもとより社会意識の大きな変化が始まり、個々の生活の潤いや豊かさが求められる時代になって、多様で多彩なスタイルのニーズに応えることの出来る新しい産業やコミュニティの形成、新ツーリズムや文化事業育成などに立ち後れたことの大きなの要因は、安定した工業力にズッポリ依存しすぎたことでしょう。このことによる危機感の無さが中心部の急激な空洞化を招いたものとだと思われます。(神戸での危機感は次に触れます)

■デザインの力
 正確に言うと「危機感の無さ」ではなく、「危機感はあったのだろうが、それが上手くイメージ化されなかった」と考えた方が良いでしょう。つまりはデザイン力の欠如とも言えます。
身近なくらしの課題を見えやすくすること、伝わりやすくすることが「デザイン」だとすれば、自らのまちをデザイン出来ないことは大変不幸なことです。
 暮らし方、共有の在り方を 急速に変化し続ける時代というキャンバスの上で、市民の生活をデザインしきれなかったことが、延いては誇りの喪失に至ったとも分析できるかもしれません。(続く)

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周南市,シビックプライド,

周南デザイン その2〝イメージとスペース〟

周南デザイン02
イメージとスペース

【前回の続き】
  そうなんだけれど、上手く言葉にできないのだけれど、
  親父へは直接、口に出して言えないけれど、
  ほんとうに親父のことは誇りに思っている。
  だって親父なんだもの・・・

 周南という「まち」の誇りを語らう時も、こんな感じなのかも知れません。
残念ながら、この地で暮らして浅い私には、この「まち」の根っこのところがよく見えません。そして、やっかいなのは冒頭に示したように、地元の人が、気取りや衒いがあるのか「上手く言葉にできない」「素直にリスペクト出来ない」ところです。そうではないと言うのでしたら、いつの間にかに、あっという間に、衰退し輝きを失った「徳山」に未だに戸惑いを持ち続けているとしか思えません。

 徳山には何があったのか? 何が残されているのか?
 徳山は何かを失ったのか? そうならば それは何なのか?

 徳山市の栄光を引き継ぎ、同時に負の遺産も背負った周南市、この町の未来を託すキーワードを探し求めるなら、やはり心の底にあった「誇り」をひも解くのが一番なのかと思います。
前回、「根底にある、あった街への誇り(プライド)をやっぱり大切にすることから、切り込んでいかないとブランド(誇れる将来)が立ち行かないと痛感します。このプライドとブランドがどう繋がっていくのかは、次回に提案したい方法がある」と記しましたが、近代日本の産業の隆盛をこの地でも支えてきた、この町の資質をピックアップすることで簡単に答えが出てくるように思われます。

 これから研究会でもキーワード探し取組まれる予定とうかがっています。この「どんなイメージ(理念)でスペース(地域)を括るのか?」やりがいのある楽しい作業です。周南に縁ある方、これからの10年、20年を見通す、見晴らすこの楽しい作業に参加されませんか? スペースをイメージすることは、未来をデザインする事ですから、私たちの個人でも人生や生活の第一歩となる楽しい仕事です。

理念的でありたい
 ブランドにもピンからキリまでありましょうが、良いブランドには確りした理念に裏打ちされたものがあります。多くはシンプルで明確、私たちを楽しく心地よい所へ導いてくれるものです。天才ジョブズではないですが、デザインを行う上で理念というものがどれほど大きな決定権を持つのか、技術や経営を先に置いた(優先した)者には生み出すことのできないモノがそこにはあります。

スペースを関係で括る
 徳山市と言っても飛び地であった西部(湯野・夜市・戸田)や鹿野・熊毛・新南陽という隣接地であった地域を全て包含したイメージを建てるのは至難です。まずは、徳山というイメージを建てて、そのイメージとの各地域との関わりを掘り下げれば、概ねのイメージが繋がってくると思われます。

気付かないものがある
 周南市PR映画の監督を務めれている菅原さんはよく「この地は明るく輝いている」と周南の地を表現されます。この度の映画でもこのメッセージが強く刻まれていますが、「明るく輝いている」この実感というか、この正体は何なのか地元の人にはなかなか分からないだろう思う。歴史も含めて徳山の誇りを掘り下げる作業を丹念に行えば、多分、同じ所へ辿るものと思われます・・・

 私も移住後、(コンビナート以外で)強くこの地を感じさされたのは、とある公園で娘を遊ばせていた時です。やはり子供連れの若いパパが、子供に話しかけている会話(内容ではなく語り口)を何気なく耳にした時です。どう書き表せばよいのか難しいのですが、徳山弁と言ったら良いのか、この山口弁独特の、しなやかで癒しのトーンに満ちたイントネーションに思わず惹き込まれてしました。(確か菅原監督も同じようなことを仰っていたようです)聞き始めはアナウンサーのような心地よい話し振りなのでてっきり標準語なのかと思っていたら、独特の柔らかい節回しがあって方言もけっこう含んでいる。考えれば身近な人や知り合いたちも皆、こんな話し方をしているではありませんか。
お年寄りでは駄目です。方言がキツくて義父とも嫁の通訳がないと通じません。女の人も少し違います。「・・・じゃけ」という語尾が(関西系の私には)大いに違和感があって、女性の場合はやさしい癒しのトーンが最後で折れてしまいます。

 話しは逸れてしまいそうですが、実はここに大きなヒントがありますので次のチャンスで・・・・

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