「山うなぎ」食べること自体が仏道の実践である!?

自然薯のとろろで作る精進うなぎの蒲焼き

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 日本食がなぜ世界的に認められるのか?

 日本食が世界遺産に登録されこの誇らしい文化が、世界的にますます普及しつつあるのは嬉しい限りです。東洋の小さな島国の「食」が普遍的な評価をうける訳は、その長寿国の基となった健康食であることもさりながら、根幹の一つにある精進料理の精神性も大きい。

 精進料理の中に「もどき料理」がある。「雁もどき」はその典型的なレシピ名。精進うなぎ(山芋の蒲焼き)も同様で、山芋を摺りおろしたとろろを、皮に模した海苔にのせて揚げたり、焼いたりするとうなぎの蒲焼きに〝姿も味わいもよく似たもどき料理〟が簡単に出来上がります。〝自然薯など上質の山芋〟だと、味付けらしい味付けをしない、摺り下ろしただけの〝生とろろ〟からでも、それらしい風味・食感を堪能できます。山うなぎと言われるだけに当然ながら栄養価も高い。
 
 精進料理といえば、茶道の形に則した懐石料理と永平寺で道元が確立した禅の料理などが代表的ですが、共に奥深いというか、洗練が極まって単なる食文化にとどまらず芸術・哲学の領域へと高められている。絶妙たる日本文化の誇るべきところです。
1970年代に気鋭の料理人ボキューズたちが産み出した新しいフランス料理、世界中に爆発的に広まった「ヌーベル・キュイジーヌ」には、精進料理である懐石料理の多くのコンセプトが取り入れられています。

 和の伝統食が菜食中心の健康食という点だけに注目を浴びているのではなく、料理をすること、食べること自体が仏道の実践であるという禅の教えに暗に共感を与えている所も大きいでしょう。
 多様化、複雑化、情報化する現代生活でありますが、生き物として食材と向き合い、生命を同化する。考えればこれが生活の第一義である。グルメとか贅沢志向とかではなく、ピュアに食べ物と向き合い、シンプルに頂戴するのが精進の第一歩なのでしょう。と言っても、多くの凡人はついぞ肉っけについ惹かれてしまいます。”もどき”は煩悩のなせる愛すべきレシピなのです。

追加記事
 この記事を書いた翌朝(今朝)ニューヨークで「ゼン バーガー」という肉の代わりに大豆を使ったハンバーガーが大人気で大行列が出来ているニュースを見ました。アメリカ版もどき料理です。”ゼン”はもちろん”禅”のことです。

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■人物歳時記 関連ログ(2021年追記)
小説「吾輩は猫である」自然薯の値打ち(夏目漱石)
小説「坊ちゃん」の正体・・・(弘中又一)
零余子蔓 滝のごとくにかかりけり(高浜虚子)
貴族・宮廷食「芋粥」って?(芥川龍之介)

■読本・文人たちに見る〝遊歩〟(2021年追記)
解くすべもない戸惑いを背負う行乞流転の歩き(種田山頭火)
何時までも歩いていたいよう!(中原中也)
世界と通じ合うための一歩一歩(アルチュール・ランボオ
バックパッカー芭蕉・おくのほそ道にみる〝遊歩〟(松尾芭蕉)

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